step by stepによる酸塩基平衡異常の診断ポイント

Ⅱ 血液ガス分析の評価(step by step)

 
酸塩基平衡異常を評価するための血液ガスの読み方は、以下の5ステップで行われる。用語や基準値、各ステップの詳細については、本コンテンツSectionⅢ以降で解説するが、まずは本項でおおまかな流れを確認されたい。

●step 1 pHからアシデーミア、アルカレーミアの判定を行う。(SectionⅠおよびSectionⅢを参照)

●step 2 血液ガスの異常が、HCO3-の変化(代謝性因子)によるものか、PaCO2の変化(呼吸性因子)によるものかを判断する。(SectionⅢおよびSectionⅤを参照)pHを調整している代謝性、呼吸性因子の関係については、Henderson-Hasselbalchの式(SectionⅤを参照)を参考とする。また、pHと[H⁺]の関係をもとに、血液ガスデータ(pH、PaCO2、HCO3-)の整合性を確認する。

●step 3 代謝性アシドーシスの場合は、アニオンギャップ(AG)を計算する。さらに、AGが増加している場合には補正[HCO3-]を計算する。(SectionⅣを参照)

●step 4 代謝性変化が予測された範囲にあるか否かを判定する。(SectionⅤを参照)

●step 5 血液ガス所見と現病歴、身体所見、検査所見を総合し、最終的な病態生理を理解し、診断する。(SectionⅢを参照)

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例として、以下のcaseをstep by stepの手順に従って診断してみる

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●step 1 動脈血液ガス pH 7.32  アシデーミア(pH<7.35:アシデーミア)
(生化学検査データからも高K血症が指摘される。さらに、[Na+]-[Cl]=28であり、アシデーミアの存在が示唆される。これらの情報より、動脈血液ガス分析データがない場合も、血液ガス分析が可能な施設への紹介を検討してもよいと考えられる。)

●step 2 PaCO2、HCO3ともに正常より低下している。
PaCO2の低下が原因だとするとアルカローシスになるはずであるが、このcaseはアシドーシスであり、血液ガス異常の主体はHCO3の低下であると判断される。

●step 3 AG=10;AGは正常(AGの正常範囲はAG=12±2mEq/L)。

●step 4 表5(SectionⅤ)を参考に、代償性変化の評価をする。
⊿[HCO3]=24-18=6、⊿PaCO2=40-32=8
⊿PaCO2≒1. 3×⊿[HCO3]の範囲内であり、混合性の酸塩基平衡異常の可能性は否定できる。代謝性異常が主体であるため、マジックナンバー15(SectionⅤ)を用いても同様に判断できる。

●step 5 その他の異常所見として、高K血症、尿pH 7.0がある。CKDステージG3、糖尿病・高血圧治療中。このうち、病歴と照らしあわせると、Ⅳ型尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis : RTA)の可能性が考えられる(CKDによるアシドーシス、高K血症は血清クレアチニンより考えにくい)。AG正常の代謝性アシドーシスで疑われる疾患は以下(表2)を参照する。 

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このうち、病歴と照らしあわせると、Ⅳ型尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis : RTA)の可能性が考えられる(CKDによるアシドーシス、高K血症は血清クレアチニンより考えにくい)。
 
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