step by stepによる酸塩基平衡異常の診断ポイント

監修によせて

監修

日本医科大学 名誉教授
飯野 靖彦


生命は環境によって生かされている。人間も然りである。進化の過程で原始の海から生命が誕生し、そして陸上に進出し、さらには文明を花開かせてはいるが、相も変わらず戦争に明け暮れている人類は、地球環境に生かされていることも考えずに地球環境を破壊している。過酷な環境である宇宙からみた地球環境のやさしさはかけがえのないものであることを自覚する必要がある。
酸塩基平衡も人間の内部環境を構成する一つの要素である。クロード・ベルナールが唱えたヒトの内部環境は細胞外液であった。もちろん、細胞が最適に機能するためには、細胞外液のほかに、細胞内液、細胞間質、血液、リンパ液などの環境を最適に変動の少ない状態にすることが生存には有利である。水や電解質の量と濃度、酸素濃度、二酸化炭素濃度、血糖などなど細胞機能に必須の環境要素があるが、その中でも重要な要素の一つが酸塩基平衡である。

地球環境では超酸性の環境から超アルカリ性の環境まで存在するが、特殊な生命体を除き、通常の生命体が生存を続けられるウインドウは狭い。人間の血液pHは7.40±0.05と非常に狭い範囲に調節されている。これは海から陸上に進出してきたわれわれの祖先が、原始の海である外部環境を内部に保持してきたからと推測される。その水素イオン濃度(酸の濃度)は生命体の基本であるDNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物の機能や代謝に影響を与える。例えば、タンパク質で構成される酵素は、最適pHによって機能が最も活性化される。血液pHは肺と腎臓によって調節されており、肺や腎臓の疾患で酸塩基平衡調節が障害されるのはもちろんであるが、糖尿病などの代謝性疾患をはじめとするほとんどすべての疾患で影響を受ける。

原疾患の治療は当然であるが、それに伴う酸塩基平衡異常を診断し適切に対応および治療することによって、患者さんの苦痛を除き、早期の治療が可能になることを本コンテンツから学んでほしい。
今回はその酸塩基平衡異常を診断する考え方を基本から解説した。
本コンテンツをご覧になった先生方、またその患者さんの治療に役立つことを祈念している。

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